2016年5月24日開催
開催食洗協総会後講演会「ミシュラン三ツ星料理人が語るこれからの社会貢献としての日本料理のあり方～低糖質の意義～」で好評を博す
2016年5月24日、日本料理「青山えさき」店主の江﨑新太郎様をお招きし、「ミシュラン三ツ星料理人が語るこれからの社会貢献としての日本料理のあり方～低糖質の意義～」という演題で総会後講演会が開催されました。
演題
ミシュラン三ツ星料理人が語るこれからの社会貢献としての日本料理のあり方～低糖質の意義～
講演内容
【１】原点
【２】料理人の世界へ
【３】和食
【４】ミシュランガイド
【５】素材へのこだわり
【６】おいしさと健康
【７】食への想い～伝えたいこと～
二つの「おふくろ」が先生の料理の原点だそうです。
①お母様が「かつお」と「こんぶ」でひかれた出汁の味、「おふくろの味」が小さい頃から体に染みついていました。
②脚本家倉本總さんの原案で、東京下町の料亭を舞台に若い板前を主人公にした テレビドラマ「前略おふくろ様」（1975年から放送）に大変感銘を受けられました。
22歳のとき、赤坂の料亭19軒に飛び込みで就職活動されたもののことごとく採用されませんでした。でもへこたれず、20軒目の「山崎」でやっと念願がかない、最高の指導者の下、一流の技術を修業されました。32歳で独立され、青山骨董通りに待望の自前店「青山えさき」を開業され、43歳のときに現在の外苑前に移転されました。
１）ユネスコ登録
2013年12月、「和食：日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録されました。その特徴は次のとおりです。
①多様で新鮮な食材とその持ち味の尊重
②健康的な食生活を支える栄養バランス
③自然の美しさや季節の移ろいの表現
④正月などの年中行事との密接な関わり
２）和の基本
何といっても「旨味」で西洋料理にはない特長です。その基本は古くから日本の食材として使われていた「かつお」と「こんぶ」からひく出汁で、「かつお」のイノシン酸、「こんぶ」のグルタミン酸が絶妙の「旨味」を引き出してくれます。また先生は例として「しいたけ」と「チーズ」でタレを作ると相乗効果で「旨味」が奥深くなることを挙げられました。「旨味」を単純に1＋1＝2と縦に積み重ねのではなく、従来の和食の固定観念にとらわれない独自の創造性を駆使した「えさき流」で横から幅を広げて3にも4にも広がる創意工夫をされます。まさに「和の極み」です。
100年以上の歴史があるミシュランガイドは毎年2回、調査員がいわゆる覆面調査を行ないます。料理だけでなく、お店のサービスや佇まい等を総合的に調査し、その結果に基づいて厳格かつ慎重な格付け審査が行われます。後日、ミシュランガイド出版記念パーティーの招待状が対象者に届けられることにより初めて星の獲得が知らされる訳ですが、星の数はパーティー当日の朝10時に連絡されるのが慣例だそうです。 この難関を突破されて、先生はミシュランガイド東京2008（初版）以降、二ツ星を2年、さらに三ツ星を7年連続で獲得という素晴らしい実績を刻み続けておられます。 ちなみに2016年版での三ツ星獲得店はわずか13店です。
安心・安全をモットーとされる先生は食材を選ばれる際には生産現場へ直接足を運ばれます。そして生産者との会話を通じて食材の育て方や取組む姿勢等をお聞きになり、同時に現場の環境等をご自身で確かめられる等、食材本来が持つ特性を最大限引き出す努力をされます。「レシピに素材をはめ込むのではなく、素材がメニューを決める」とのお話が印象的でした。
生活習慣病の代表格、糖尿病の予防策としてゆるやかに「糖質制限」された食事、ロカボ食の研究が最近注目されています。またダイエットにはカロリー制限よりも糖質制限のほうが効果があるという学会発表もあるそうです。
先生はご自身が糖尿病にならないための予防食をと考えられたのがきっかけとなり、ボリュームたっぷり、健康、おいしい、のすべてを満足するお弁当を提供する目的から「おいしいプラス」という事業を2年前に創業されました。そのコンセプトはお弁当１食当たり次の3つです。
①カロリー ： 500kcal以下
②糖質 ： 40ｇ以下
③化学調味料、保存料、着色料、香料、の不使用
この中で②が最も困難ですが、白米に「えさき流」創意工夫で開発されたこんにゃくを加えて見事に実現されました。このお弁当を糖尿病患者の方やその予備軍の方に食べていただければきっと社会貢献ができるとの信念を持っておられます。会場では先生が監修されたグルテンフリーのベークドケーキの味を参加者が堪能していました。
是非「かつお」と「こんぶ」で出汁をひいてほしい、そうすると和食の良さが体感できると訴えられ、急須を用いて家庭で簡単に出来る出汁のひき方をご紹介いただきました。
先生はお店で「かつお」と「こんぶ」で出汁をひくことをルーティンとして１日を始められるそうです。その基本軸がしっかりと根付いておられる上に絶え間なく継続されておられる独自の創意工夫とご努力がミシュランガイドの三ツ星獲得7年連続という偉業につながっていると実感できました。先生の和食を中心とした料理への熱い想いが聴講者にしっかりと伝わった大変有意義なご講演でした。