現在の食器洗浄機は、高温の洗浄液を高圧で噴射して食器の汚れを落とすスプレー式のものが主流となっています。タイプは、最も小型のアンダーカウンタータイプからフードタイプ、ドア(ボックス)タイプ、そして大型のコンベアタイプまであります。店の規模に応じてタイプを選んでください。高価なものですから、事前にしっかり情報を収集し、よく理解してから購入しましょう。
汚れの種類と汚れとなる食品の代表例には、次のものがあります。
・ご飯、スパゲッティー、うどんなどのデンプン汚れ。
・卵、肉汁、さしみ、マヨネーズなどのたんぱく質汚れ
・ステーキ、天ぷら、魚、ドレッシングなどの油脂汚れ
・茶渋、ケチャップ、カレー、果汁などの色素汚れ
食器に付着する食品の残りかすは、大きく分けて3種類で、油脂、たんぱく質、炭水化物(デンプン)があげられます。このなかで、油脂はある程度温度が上がりますと粘性が低くなり、また、その一部が洗浄剤のアルカリと反応して水溶性の石けんを形成し、食器からの除去が容易になります。他の2種類についても、下膳後ただちに洗浄すれば、汚れの種類による落としやすさの違いはほとんどありません。
食器洗浄機といえども、どのような汚れに対しても100%完全に洗浄できるわけではありません。食器洗浄機を有効に使いこなすための工夫が必要です。
デンプンやたんぱく質などの汚れは、乾燥固化すると大変落ちにくくなります。このような場合、食器洗浄機を使用する前に食器を温水に浸漬しておきますと、より効果的に洗浄できるようになります。このことは手洗いでも経験されていると思いますが、このとき浸漬槽へ入れる洗浄剤を浸漬洗浄剤(予備浸漬剤)と呼び、さらに汚れを落ちやすくする作用があります。
浸漬洗浄剤には、微泡性の中性洗剤や酵素系洗浄剤があります。
スプレー式の食器洗浄機では、上下の洗浄ノズルからアルカリ性無機塩を主体とした高温の洗浄液を高圧で噴射させることによる、物理的作用と化学的作用との相乗作用によって汚れを洗い落とします。
アメリカでは、食器洗浄機の能力に関する規格が定められています。温度もその重要な対象であり、ドアタイプの場合、洗浄温度が66℃以上、すすぎ温度が82℃以上91℃以下と決められています。これらは単に洗浄効果を上げるためだけでなく、除菌や乾燥効果、さらに安全性も考えられて設定されています。
日本ではこのような規格は定められていませんが、洗浄温度は60~70℃、すすぎ温度は80~90℃を基本にしてください。
食器洗浄機は、洗浄液を高圧で噴射して洗浄するという構造になっていますので、食器洗浄機に界面活性剤を主成分とした手洗い用の中性洗剤を使用しますと、一瞬にして食器洗浄機が泡まみれになり、洗浄作業が困難となります。したがって、できるだけ泡が立たずに、かつ、すぐれた洗浄効果を発揮するような成分を選び出し、それらを効果的に配合して、専用の洗浄剤がつくられています。このような洗浄剤成分の一つとして、アルカリ性無機塩が利用されています。
洗浄基剤として、水酸化ナトリウム(カリウム)、炭酸ナトリウム(カリウム)、けい酸ナトリウム(カリウム)などのアルカリ性無機塩、金属イオン封鎖剤として、ポリりん酸ナトリウム、エチレンジアミンテトラ酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウムなどが配合されていますが、その他に製品によっては、酸化アルキレン系の非イオン界面活性剤、漂白(酸化)剤なども配合されています。
食器洗浄機用の洗浄剤は、アルカリ性無機塩を主体とした洗浄力の強い洗浄剤で、
液性として強弱はありますが全てアルカリ性です。
食器洗浄機用の洗浄剤の種類としては、次のものがあげられます。
・ 形態別では、液体、粉末、固体(カートリッジ容器入り)洗浄剤
・ 水酸化ナトリウム(カリウム)の量により、劇物、非劇物洗浄剤
・ りん酸塩の有無により、有りん、無りん洗浄剤
・ その他、有効成分を増量したコンパクトタイプ洗浄剤、漂白剤を配合した漂白剤配合洗浄剤、アルミ食器用洗浄剤などがあり、荷姿も小さいものから大きいものまでいろいろあります。
使用している水には、カルシウムイオンやマグネシウムイオンといった成分が含まれています。これらの成分は、食器洗浄機用洗浄剤の働き(洗浄力)を防げますので、使用水に最も適した洗浄剤を提供するために、使用水に含まれているこれらの成分量の目安となる硬度を測定し、使用水の硬度が高い場合は、硬水用の洗浄剤をおすすめします。
ちなみに、日本の水は比較的カルシウムイオンやマグネシウムイオンが少ない方ですが、温泉地などの水にはこれらの成分が多く含まれていますので注意が必要です。
洗浄剤を使用する店の条件、すなわち、食器洗浄機の使用水の水質、食器の種類、汚れの種類や量などにより、洗浄剤の種類、洗浄液の洗浄剤濃度を設定します。
このマークは、日本食品洗浄剤衛生協会が定めた「業務用食器洗浄機用洗浄剤」に関する品質や表示などについての自主規格基準に適合していることを示す「適合マーク」です(下図参照)。
野菜・果実・飲食器などを対象とする中性の食品用洗剤(いわゆる台所用洗剤)は、食品衛生法で規格基準が定められており、安全性が確保されていますが、食器洗浄機に使用する強いアルカリ性の洗浄剤は、この規格から除外されています。そこで、日本食品洗浄剤衛生協会では、自主規格基準を定め、これに適合した商品に「適合マーク」をつけるという「認証制度」を平成4年5月から発足させました。
業務用食器洗浄機用洗浄剤は、この「適合マーク」のついた洗浄剤をお選びください。
リンス剤は、水に微量(1/10,000~1/20,000)添加することにより、表面張力を低下させる働きがあります。したがって、すすぎ水にリンス剤を添加しますと、食器の表面に水滴が残らず、乾燥も速くなります。その結果、食器をふきんで拭く必要がなく、食器の表面に白い斑点も残らず、きれいで、衛生的な仕上がりが得られます。
なお、リンス剤の原料には、すべて、安全性が確認されている食品添加物が使用されています。
食器洗浄機用洗浄剤はアルカリ性の強い製品が多く、食器の材質によっては、食器が損傷を受ける場合もありますので、洗浄剤メーカーの担当者と相談の上、食器の材質を確認し、最適な洗浄剤を選定することをおすすめします。
洗浄剤の選定で特に注意すべき食器には、次のようなものがあります。
・クリスタルグラス ・銀器、銅器、錫器、アルミ食器 ・漆器
・ボーンチャイナ ・ポリカーボネート製食器
スケールとは、水中のカルシウムやマグネシウムが少しずつ付着した堆積物のことです。次第にノズルや配管に詰まり、洗浄、仕上げに悪い影響を与え、食器洗浄機自体の寿命も縮めてしまいます。
スケールは除去剤を用い、次の操作で除去します。
(1) 洗浄剤とリンス剤の供給装置のスイッチを切ります。
(2) 洗浄タンクにたまっている洗浄液を排出します。
(3) 洗浄タンクに新しい水または湯を入れ、所定濃度のスケール除去剤を加えます。
(4) すすぎ湯を止め、食器洗浄機を10~20分間運転します。
(5) 中和剤で中和した後、排水します。
(6) 新しい水または湯を入れ、食器洗浄機を2~3分間運転して食器洗浄機内をすすいだ後、排水して終了です。